カーテンを探そう!

いろいろなカーテンを集めました。

日本百名山第62座、男体山・2484m(続編)
旅行者:ちゃおさん
旅行期間:2007/10/05~2007/10/06
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長い石段の前で一礼し、お清めをし、拝殿に参拝し、受付にて500円のお札を戴き、10時20分、登拝門にて更に一礼し、暗い木立の中に足を踏み入れる。
自然林なのか人工林なのか、昼なお暗い日光杉の樹林帯の中、遥拝所までの石段を過ぎると後は林の中の山道。原始、紗門勝道は妖怪変化どころか、実際の熊、狼の徘徊する暗闇の森を歩くに連れ、金剛経を唱え、勇を鼓舞して登り詰めたに違いない。

歩くこと30分、森が急に開け、突然の車道に出る。崩れ易い山肌の治山治水事業の為に山の周囲に張り巡らされている工事用道路で、3合目から4合目までの約20分はこのアスファルト道路を歩くことになる。泉下の勝道さんも時代の様変わりに驚いているに違いない。

さて4合目には小振りの鳥居が立っていて、ここからは山頂まで本格的な山道になる。時間は11時過ぎ。早くも下りおりる若者3人に出会う。話を聞くと朝6時に入山したとのこと。元気な足取りでぐんぐん下って行った。深い森は3合目までで、ここから先はトウヒ、米ツガ等の針葉樹、それから先は種々の雑木林に覆われているが、土壌が痩せているのか密とした樹林帯はない。

木の間から眼下に中禅寺湖が広がり、時々雲に覆われたり、遠く湖上を渡る汽笛が響いてきたり、と、急坂の続く登り一方の登山道、休憩のたびに心を和ませるものがあった。しかし残念ながら紅葉にはまだ少し早く、漸く6合目に至り葉の一部赤味がこれから始まろうかとする数本の楓があり、写真に収める。写真を撮り、一休みしていると下から聞きなれない外国語を話す3人グループが登ってくる。

挨拶を交わすと韓国人で、その内の一人は日本語が上手で、今朝ソウルからの深夜便で羽田に到着し、レンタカーを借りてそのままこの男体山にやってきた、とのことである。まだ40代の3人。お国柄なのか元気そのもののような感じの健脚で、暫く立ち話をしたが、彼らは既に百名山の50座を登頂しているとのことである。九州の山は大体登ったとのことであるが、中で天孫降臨の高千穂、韓国岳の話には目を輝かせ、天孫は韓国から来て日本の山に降り立った、とか、韓国岳に登った時は韓国は見えなかったが、天気が良いと見えることもある、等々、誇り高き民族性を露わに出していた。

日本には過去十数回来て、名山に登り、山岳レポートを書いている、との話であった。当方に韓国に来たことはあるか、と聞かれたので、もう何年も前になるが、大邱の近くにある岩峰を登ったとの話をしたが、800mちょっとの山で、帰りはケーブルで下ったことを思えば、彼らの日本の山に対する熱意とは雲泥の違いがあった。

12時。7合目手前でお昼にし、丁度1時、8合目にある滝尾神社・山ノ神に到達する。高度2200m。残りあと250m。先刻お昼でお弁当、ジュース、オレンジ等を食べ、少しは軽くなったと思われたリュックも、二日分の食料、着替え、緊急用具等が詰めこまれたリュックは尚まだ重く、坂もきつい。勝道上人が日光にやってきて最初に建てた神社、滝尾。その神社の分祀が8合目に建立されていると言うのは、ここが矢張り胸突き八丁なのか。休んでいると、数人グループの登山者、夫婦者、単独登山者、何人もの人々が下山して行く。今日の日和、皆満足しているに違いない。

ここから更に30分、9合目を過ぎた辺りから森林限界になり、ガレ場に作られた登山道を歩く。頂上は直ぐ先に見えるが、空気も薄く疲れも激しい。下山の何人かと行き交うが、皆それぞれから、頂上はもう直ぐだ、頑張れ、との挨拶をもらう。一気に上りきる余力も無く、ゆっくりと歩を進め、1時45分、漸く山頂の奥の院鳥居をくぐることが出来た。

楕円形で平坦な頂上はかなり広く、ちょっとした田舎の小学校の校庭程の広さがあり、その中央付近には二荒山神社奥社が鎮座し、又その隣には御祭神・大己貴命(大国主命)と思われる二荒山大神の大きな銅像が立っている。その反対側、少し小高くなった磐座(いわくら)様の巨岩の上には、何か銅剣ようの随分と長い刀が岩に突き刺さっていて、これは丁度高千穂山の天の逆鉾を想像せざるを得なかった。お互いに影響があったのか、どちらが早かったのか、それとも全く別個の流れの中に象られたのかは知らず、ここにも又奇妙な共通点を見る思いがした。

山頂から眺める中禅寺湖は遥か真下に小さな楕円状の池の如くさざなみも見え、殆ど垂直状に登ってきたこの山の高さをまざまざと知ることができた。と同時にこの高みに登り詰めた満足感をも味わえた。

目を転ずると前方真近に大真名子山、太郎山のそれぞれ2000mを越える秀峰が、更にその先、この男体山とほぼ同じ高さの女峰山も静かな山容をたたえ、この男女2座を御神体とする山岳信仰は、この間に太郎と真名子の二人の子供までもうけているのであった。

果たして柳田國男であれば、どんなおとぎ話でも語ったであろうか。春先、新幹線の窓から眺めた白い雪をかぶった峰々は、今こうして目前にある。山に登る感動と言わずして何と表現しようか。知らずこみ上げる静かな感動。磐座の前に掛かる半鐘を2回打ち鳴らし、澄んだネ音は天空に消え、清純な気持ちの中で神々に感謝し、生きていることに感謝した。

登ってきた時にはまだいた韓国人グループも行き違いに下山し、聞くと今日中に東京まで戻るとのこと、それで登攀も下山も急いでいたようだ。山頂にはまだ数人の登山者もいて、これからもまだ続々と登ってくるだろう。好天の一日、登山日和でもあった。当方当初の予定ではこのまま縦走して反対側の志津まで下り、三本松バス停まで行く積もりでいたが、見ていると誰もこのコースを取る人も無く、皆、登ってきた山道を再び元の二荒山神社まで降りていく。

60を過ぎた老登山者、もう若くは無い、無理をすることもない。この縦走はいつか真夏にやれば良い、と、皆に見習い当方もまた同じ道を引き返し下山する。

2時20分、山頂で30分ほど寛ぎ、再び奥社・二荒山大神に拝礼し、この山に別れを告げる。登ってきた時とは違って、下りはそれ程の疲れも感じず、途中、段差の大きい箇所に気をつけて下りる以外の危険も無く、木の間隠れに表れる湖と湖上を渡る遊覧船、その航跡、岸辺に寄せる漣、時々の警笛。風の無い、程よい陽気の秋の山旅を存分に楽しめた。もう既に人生の後半に入っているが、人生の後半もこの様な穏やかなものであって欲しい、と願いつつ。

帰りは2時間もかからず、4合目の鳥居、車道まで出て、更に小1時間、再び鬱蒼とした杉林を抜け、丁度5時少し前、中宮祠、登拝門に到着する。最後に又山に向い、今日一日の無事をお礼する。丁度その時刻、社務所のガラス窓にカーテンが引かれるところだった。さて、今晩の宿、どこにしよう。中善寺温泉に行けば、泊まる場所くらいはあるだろう。と、夕闇迫る山を後にした。

     < 秋の山 湖上に映る 逆さ富士 >

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